タイムマシンはすでに開発されている。

タイムマシンはすでに開発されていると言ったら、驚く人は多いのではないだろうか。
いや、オカルトや陰謀論の話をしようとしているわけではないので、ちょっと聞いて欲しい。

ある調査によるとタイムマシンを使ってやりたいことは、未来に行って投資や投機で大儲けしたいということらしい。
とても即物的で面白い考え方だ。おそらくバックトゥーザフューチャーの影響があるんだろう。

現実的に考えて、タイムマシンがSF作品のまま開発されていたら大変なことになる。
過去は人々の好きなように改変されてしまうし、未来にいって他の人の著作や発明、権利を盗んでしまうのは重大な人権侵害だ。

それを防ぎつつ、タイムマシンの利用を厳格化していくとどうなるだろう。
きっと、他人の権利を奪うような利用は禁止され、利用には相応のコストがかかり、過去の改変を許さないような運用になるだろう。

そんななかでの使い道は、たとえば今は学生なので収入がない。親からの学費負担も期待できないといった人々に「未来の自分に学費を払ってもらう」ことなどではないだろうか。

未来の自分は働いているのだから、(しかも、学費を負担してもらって大卒であるので)ほどほどに金銭的余裕がある。
だから、未来の自分に学費を負担してもらおうという理屈だ。

このような使い方であれば、他の人の権利を侵害せずにタイムマシンを利用できる。社会的に適応したタイムマシンのあり方だ。

こんな使い道はどうだろう?
とても面白いビジネスのアイデアを思いついた。今はお金がないのでできないが、
これを実現できればきっと未来の自分は莫大な利益を得ているはずだ。
その未来の自分にこのビジネスアイデアの初期投資をしてもらおう。

ちょっとした不良品のタイムマシンであればパラドックスを引き起こしかねないが、これも認められるだろう。
誰の権利も侵害することがないし、儲かっているはずの自分からしてみればほんのわずかなお金だ。

ここまで書いて、ご理解いただけたと思う。
僕の言うところのタイムマシンとは「銀行」のことだ。

「銀行」というタイムマシンは、そのビジネスアイデアを精査して、イメージのなかで未来に行ってみてくる。
タイムパラドックスが引き起こされてしまう可能性も十分にあるが、その時のためにタイムマシンの利用料を頂いておく。

タイムマシンが生まれたら、世界はとんでもないことになるのではないかと想像するのは楽しい。
だが実のところ、この手の銀行はすでにタイムマシンそのものだった。

この銀行のタイムマシン機能のことを「信用創造」と呼ぶ。
その結果、人類の富の総量は指数的に膨れ上がることになる。

タイムマシン後の世界に僕らは生きているのだ。